1999年7月31日『サターンが来た!』
注文してから2週間目の日曜日、納車日が来た。天気は晴れだ。さっそくサターン八王子に行く。

店内で納車説明を受けた後、外に出た。ご存じ「サターン納車式」の儀である。
スタッフ全員の紹介に続き「I say Saturn!」を全員でシュプレヒコールである。ちょっと、とゆうより相当気恥ずかしいが、これがサターン流である。 しかし日本でも建前や進水式にはそれなりの神がかりな儀式を行う。サターンの納車式も「今後の安全祈願と新車にオーナーの魂を入れる」儀式と考えれば極めて和風な発想であり、 御神酒のシャンパンでもあれば完璧である。が、確かに宗教っぽさはある。「サターン教」である。

店内に貼られる写真を撮り、エンジンを掛けてスタッフのお見送りの中、サターン八王子を出た。まだクルマに慣れていないため、急に遠乗りはせず、実家へ行っていろいろ眺め回した。

幅4m道路に面した実家の車庫にクルマを入れるには、このサターンは苦しい。最小回転半径は5mを超えるし、フロントオーバーハングも大きい。 思ったよりも不便なクルマだが、でもそんなことは切り返しを数回すれば済む。実用車でこのクルマを選んだ訳じゃないからどうでもいいことなのだと自分に言い聞かす。

革のシートとサンルーフ。パッケージがセダン・ワゴンと同じなのでシートもそれほど低くなくゆったり乗れる。「いい感じかもだよ〜」この何気ない、いい感じこそがサターンフィーリングなのだ!

次の日、さっそく試し乗りである。R20号で八王子から相模湖へ行き、帰りは中央高速を走ってみた。結果は「思ったより軽快」だ。
特にATのトルクを溜めるようにすると出足はかなり速い。ゆっくりアクセルを踏んでいくと切れ目なくシフトアップして、タコメーターの針だけが「スッ」と下がるこの感覚は気持ちいい。車重が軽いのも好影響しているのかもしれない。
「サターンSC2 3door」の広大な左側開口部(北海道にて)
ちなみに購入時は5MTが希望だったが「今年はもうマニュアルは入らない」ということでATにしてしまった。後でマニュアルを試乗したら、リンクの感じがイマイチ(FFなので仕方ないが...)だったので結果としてATでよかったようだ。

アクセルを踏む感覚と車速のリニア感、ハンドルの操舵感も丁度いい重さで運転し易い。これは仕事で乗るホンダの2.3リッターのセダンと全く反対で、人間の感覚に合っている。 ちょっと前のホンダ車(初期型CR-X〜, 2代目〜プレリュード等)はこの辺がすごく良く出来ていた印象があったが、超軽いハンドル、アクセルの踏み加減と連動しない車速でパワーのあるこの2.3リッターのセダンはかなり怖い。操作系は出来の悪いドライブバイワイヤー(フライバイワイヤーと同じ表現)という感じだ。 ホンダは車種に関係なく統一されたアイデンティティを持っていると信じてたが、こうゆうクルマも作っているとは知らなかった。ここ10数年で日本車とアメリカ車の性格が逆転してしまった感がした。

クルマってやっぱり「人間の感覚に合っている」これに尽きると思う。だからサターンは運転が怖くない。 低速のトルク感を考えれば数値上低い最高出力も納得できるし、ATでもレッドゾーンまでキッチリ回る十分な高速性もある。試し乗りの中央高速は不安なく快適に法定速度を大幅にオーバーしてみた。

まだ買ったとは言え、試乗段階である。本当のサターン車に関しての評価は出来ない。最初はいいのは当たり前で、今後の故障発生頻度とそのサービス体勢如何による。 ちょっと心配なのは、あるホテルのバーで飲んでいたところ、自動車販売をしているというアメリカ人に会った。そこでの話の中で「サターンに乗っている」と言ったところ「OH my God!!」な状態だった。 理由を尋ねると「3年もすれば判るよ」のようなことだった。たぶんサターンは経年劣化が激しいのだろう。その人曰わくアメリカじゃ「HONDA is No.1」だそうだ。でも、その為のサターン流「礼をつくす」である。期待しているよ。サターン!

しかしサターンへの期待は呆気なく裏切られた。購入2週後の真夏「自走北海道ロングラン5,000km」でさっそくトラブル発生である。続く...
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